●蓮實重彦セレクション ハリウッド映画史講義特集上映

2018年12月24日

映画ファンの方なら既に御存知の通り、東京は渋谷にある名画座シネマヴェーラ渋谷で、蓮實重彦氏のセレクションによる「ハリウッド映画史講義特集」が今月の15日より始まり、連日、多くの映画ファンが同館に詰めかけて賑わっている。

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特集の題名は無論、氏の歴史的名著のひとつ「ハリウッド映画史講義」から採られたもの。昨年めでたく文庫化された同書は、もともとは蓮實氏が1985年から89年にかけて責任編集を務めた、今は亡き映画季刊誌「リュミール」の第3、9、13号の各特集にあわせて執筆された文章を主体にしていて、1993年にようやく一冊の本に纏められて刊行された。1965年生まれの筆者にとって、「リュミール」が発刊された1985年は、はからずもちょうど20歳になった年で、既にいっぱしの映画好きの学生ではあったものの、同誌が発売されるのを毎号楽しみに待ちわびながら買い、誌面を貪るようにして読みながら、ハリウッド映画の知られざる"翳りの歴史"について改めてイチから学び直していったことが、懐かしく思い出される。

雑誌「リュミエール」を多感な青春期にリアルタイムで摂取・愛読し、蓮實氏の数ある映画書の中でも、とりわけ「ハリウッド映画史講義」に間違いなく多大な教えを受けた映画学徒のひとりとして、今回のシネマヴェーラ渋谷で特集上映される作品群は、ある意味、自分の映画人生の基盤のひとつを形作った、コアで大切なものばかり。

とはいえ、「リュミエール」や「ハリウッド映画史講義」が刊行された1980年代後半から90年代前半の時点では、そこで取り上げられ、紹介されているさまざまな映画作品は、若輩・新参者の自分にとって未知・未見のものがまだまだ数多く、当時は無論、今日のようにネット環境が整備され、映画ソフトのアーカイヴ・コレクション化が一気に加速化する以前の大昔の話だけに、シネクラブや名画座にせっせと通ったり、レンタルビデオを活用したりするのがせいぜい。結局、筆者は、蓮實氏に何周も周回遅れとなりながら、後追いで映画作品そのものとようやく出会い、そのインパクトや意味内容を、時間をかけてじっくり咀嚼・吸収しながら、その学習の成果をわずかなりとも世に還元すべく、自らも映画の文章を書き始めることになったと、今にして言える。

さてそんなわけで、この機会を利用して自分がこれまで書き綴ってきた文章をあれこれ持ち出すのは、なんとも僭越でおこがましいことながら(そしてまた、あいにく師走の多忙と重なり、アップのタイミングがすっかり遅くなってしまって恐縮だが)、「ハリウッド映画史講義 」に学恩を負う身として、今回の特集で上映される作品の一部について筆者が過去に書いた拙文を、別ログで蔵出しさせてもらう次第。皆さんの予習・復習の参考に少しでも役立ててもらえば、幸いです。

*なお、2009年秋、当時まだ日本では劇場未公開&未ソフト化のままだった『ショックプルーフ』(1949 ダグラス・サーク)や『秘密調査員』(1949 ジョゼフ・H・ルイス)、『大いなる夜』(1951 ジョゼフ・ロージー)、『夕暮れのとき』(1957 ジャック・ターナー)の激レア4作品の日本初紹介となる貴重な機会となったのに加えて、『飾窓の女』(1944 フリッツ・ラング)、『上海から来た女』(1947 オーソン・ウェルズ)、『キッスで殺せ』(1955 ロバート・アルドリッチ)というきわめつきの傑作3本も交えた、WOWOWでのフィルム・ノワール特集放映の際に筆者が執筆した以下の拙文も、ぜひあわせてお読みください。

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