●シネマ解放区『サンタモニカの週末』(1967 アレクサンダー・マッケンドリック)(蔵出し原稿) 

2019年09月15日

CSの洋画専門チャンネル、ザ・シネマの「シネマ解放区」の11月号に、日本では未ソフト化[後記:この時点ではそうだったが、その後、2018年4月に日本でもDVD化された]知る人ぞ知る恋愛爆笑喜劇、『サンタモニカの週末』(1967 アレクサンダー・マッケンドリック)の紹介記事を書きました。下記のオンライン・サイトに既にアップされているので、どうかお読みください。

https://bit.ly/2ztvSFz

今しがた、"知る人ぞ知る"などとつい勿体ぶって紹介したものの、本文の方でも書いた通り、この『サンタモニカの週末』は、たしか大学に入って間もなくの頃、昼間にテレビで放映しているのを何の気なしに見出したら、おおっ、こいつは滅法面白いじゃん! と、つい無我夢中になって映画を見終えた意外な拾い物の作品で、その時点ではまだ、マッケンドリックという監督の名前は、筆者にとって未知の存在だった。

それからほどなくして、淀川長治、蓮實重彦、山田宏一の3氏が、「映画千夜一夜」に先立って1985年の末に刊行した初の映画鼎談集、「映画となると話はどこからでも始まる」の巻末に、各自が思い思いのスタイルで映画ベスト100を挙げるなかで(ただし、3人とも結局、指定の枠を大きくはみだし、このパートは、「ベスト100本を選ぶとなるとどうしてもおさまりきらない」と題されることとなる)、山田氏が『海賊大将』(1965)と『サミー南へ行く』(1963)をその中に選んでいる上に、「少女と少年のこわさを描いた児童文学ならぬ"児童映画"の二大傑作。ビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』(1973)にまさるとも劣らぬ素晴らしさであった」とコメントしているのを見つけて、マッケンドリックという監督への個人的な興味と関心が、俄然高まることになったのだった(一方、同書の中で蓮實氏は、「大した監督でないことはわかっているが、それでもこれだけには一票を投じておきたい映画ベスト10」と前置きをした上で、『勇者の赤いバッヂ』(1951 ジョン・ヒューストン)や『不実な女』[=『不貞の女』](1968 クロード・シャブロル)などと並んで、マッケンドリックの『成功の甘き香り』(1957)を挙げていたのだった...)。

それでも、マッケンドリックの映画は、いざ見たいと思ってもなかなか日本では見られる機会がなく、たしかその頃は、『マダムと泥棒』(1955)と『成功の甘き香り』が、どうにかビデオやテレビで見られるのがせいぜいだった(今でこそ、イーリング・コメディも多少は日本で見られるようになったものの、イギリス映画の歴史を語る上で必要不可欠なこれらの宝の山のうち、製作当時、実際に日本で劇場公開されたものは、この『マダムと泥棒』1本きりというありさまだったことは、既に多くの識者が一様に指摘してきた通りだ)。

結局、筆者がマッケンドリックの諸作品を実際にあれこれ見て本格的な研究に乗り出すのは、インターネット時代になって海外で発売されるソフトや書籍などを容易に購入できる素地が整った2000年代に入ってからのこと。まずはイーリング・コメディの代表作を海外盤のDVD-BOXで買ってまとめ見したのを皮切りに、『海賊大将』や『サミー南へ行く』が、やはり海外で発売されるのを個々に買い求めて、ようやく憧れの作品たちといざ対面し、聞きしに勝るその見事な出来栄えにすっかり感嘆して(『マンディ』(1952)がこれまた"児童映画"の傑作で素晴らしい)、このマッケンドリックという人物が、やはりタダモノではなかったことを改めて深く実感することになったのだった。

今回の『サンタモニカの週末』の放映をきっかけに、また一人でも多くの映画ファンがマッケンドリックという存在に興味を持つようになり、いずれは彼の特集企画が日本でも実現する日が訪れるのを、気長に待ちたいところだ。

なお、以前に書いた『成功の甘き香り』の短い紹介記事があるので、別ログで蔵出ししておきます。いま改めてこの映画について書くとなると、じっくりと腰を据えて本格的に取り組まなくてはならず、それをするだけの気力や体力、時間的余裕が到底ないので、ひとまず今回は、初出に若干手を加えた程度の再掲という形でどうかご勘弁のほどを。なお、「マッケンドリックが教える映画の本当の作り方」の中で、監督のマッケンドリック本人が、この傑作が生み落とされるにあたって多大な役割を果たした、クリフォード・オデッツによる物語の再構築法や推敲作業の舞台裏の様子を詳細に物語っているのと、ジェームズ・ネアモアが洋書の「BFI FILM CLASSICS」シリーズの1冊で、やはりこの作品を鮮やかに論じているので、興味のある方はぜひそちらをご参照ください。

[2016.11.1 旧ブログ「In A Lonely Place」にアップ]