●『成功の甘き香り』(1957 アレクサンダー・マッケンドリック)(蔵出し原稿)

2019年09月15日

ショウビズ界に隠然たる影響力を及ぼすコラムニストと彼を取り巻く周囲の人々の姿を、辛辣なタッチで綴った業界内幕ドラマの傑作。 

『マダムと泥棒』(1955)など、イーリング・コメディを代表する傑作を生み出した英国の俊才監督アレクサンダー・マッケンドリックが、バート・ランカスターの主宰する独立プロの招きで渡米し、冷徹な人間観察力と鋭敏な演出手腕を存分に披露している。

アーネスト・レーマンの短編小説を脚色したのは、「レフティを待ちながら」で1930年代の左翼演劇界を代表する戯曲家として一躍名声を博したクリフォード・オデッツ。戦後、赤狩りの際には友好的証人となった彼は、ハリウッドの舞台裏を描いた戯曲「大きなナイフ」が、先にロバート・アルドリッチ監督の手で『悪徳』(1955)として映画化されたばかりだった。NYのマンハッタンで大胆なロケ(それも大半が夜間撮影)を敢行し、街の雰囲気と人々の息遣いをなまなましくリアルに捉えたジェームズ・ウォン・ハウの秀逸な撮影と、チコ・ハミルトンの生演奏をフィーチュアしたエルマー・バーンスタインのジャズ音楽も、本作の魅力を高めるのに大きく貢献している。

NYのショウビズ界に大きな影響力を及ぼすゴシップ・コラムニストのJ.J.(バート・ランカスター)。そんな彼に取り入って利ざやを稼いできたプレス・エージェントのシドニー(トニー・カーティス)は、最近J.J.から冷淡に扱われ、焦りを感じていた。何とか失地を回復しようと、シドニーは、J.J.がこよなく愛する妹のスーザン(スーザン・ハリスン)と、彼女の恋人スティーヴの仲を裂こうとあれこれ画策する。けれどもスーザンは、シドニーを背後で操ってスティーヴを中傷する真の黒幕が、実は兄のJ.J.であることにやがて気づき...。


[2016.11.1 拙ブログ「In A Lonely Place」にアップ。初出は、「フィルム・ノワールの光と影」(1999 エスクァイア マガジン ジャパン)]