●『ビッグ・リーガー』(1953 ロバート・アルドリッチ) (蔵出し原稿)

2018年12月29日

1941年に映画界入りして以来、苦節12年。その間、ジャン・ルノワール、チャールズ・チャップリン、エイブラハム・ポロンスキー、ジョゼフ・ロージー、等々、さまざまな監督たちのもとで助監督として働き、1952年からはTVドラマの演出を手がけるようになっていたアルドリッチが、34歳にして遂に念願の映画監督デビューを果たした記念すべき第一作。

とはいえ、その内実は上映分数僅か71分の小品のプログラム・ピクチャー。製作元のMGMといえば、本来、豪華絢爛をモットーにして、長年ハリウッドのトップの座に君臨していた一大メジャー映画会社だが、戦後、幾多の要因によって映画産業そのものが危機的状況に直面。MGMも大きな痛手を被って従来の体制の見直しを迫られ、当時、折しも世代交代期を迎えていた同社の製作首脳部が、若くてフレッシュな才能を発掘して彼らに低予算映画を撮らせようと新たな方向性を模索するなか、まだ新人とはいえ、既に映画やTVでの現場経験の長いアルドリッチが推薦を受け、本作の監督に起用されることとなった。

従って本作は、アルドリッチが自ら選択したものというより、あてがいぶちの企画だが、それが野球を題材にしたスポーツ映画、しかも、プロの選手として大成するのを夢見て春季キャンプに集まった新人たちが、今後の自らの将来を切り拓くべく、生き残りを懸けて互いに相争うという物語は、まださほどの深刻味は帯びてないとはいえ、既に処女作にしてまさに"アルドリッチ的"と言うほかないだろう。その内容は、当時のアルドリッチが映画界において置かれていた状況とパラレルの関係にあり、以後、彼は生涯、その苦難に満ちた闘いを続けていくことになる。

新人選手たちを見守るベテラン・コーチを好演するのは、『犯罪王リコ』(1930 マーヴィン・ルロイ)の名優エドワード・G・ロビンスン。赤狩りの時代、共産主義シンパとしてグレイリストに載せられた彼は、仕事を干されて苦しめられ、本作は、いわば格落ちして再出発した彼の映画復帰作の一本となった。また、リチャード・ジャッケルが助演で印象的な演技を披露。以後彼は、アルドリッチ映画の常連俳優として、遺作の『カリフォルニア・ドールス』(1981)まで数々の作品の脇を彩ることになる。


[初出:「ロバート・アルドリッチ大全」(2012 国書刊行会)]