長編小説第3作の「黒い時計の旅」が彼の作品の日本初上陸という形で1990年に邦訳されてすぐさまそれを買い求め、噂にたがわぬその自由奔放な幻視的想像力と鮮烈な文体にすっかり圧倒されて以来、スティーヴ・エリクソンは、筆者にとって現代アメリカ文学の最も好きな愛読作家のひとり。以後も、訳書が刊行される度に購読し、そのユニークで強烈なエリクソン・ワールドに大いに魅了されてきた。昨秋、最新長編小説の「きみを夢みて」がいきなり文庫で初訳刊行されたのも嬉しい驚きだったが、今回ここに紹介する長編小説第8作の「ゼロヴィル」も、2008年の夏に発売された柴田元幸氏責任編集による文芸誌「モンキービジネス」第2号の中に、その原形となる同名短編が載っているのを貪るようにして読み、めくるめくような刺激と興奮を覚えて...

「男と女はアレしかないよ......バンザーイ!」と、男女の生=性の歓びと哀しみを独自の手法で魅力的に描き続けた、今は亡き天才作家・神代辰巳(1927-1995)。女性の裸と性描写が売りのプログラム・ピクチュアの世界で活動しながらも、一見投げやりでいい加減、その実、途方もなく過激で自由奔放な実験精神に満ち溢れた彼の作品は、そうした枠組みを軽々と超越し、男女を問わず、すべての観客に不思議な解放感と生きる活力を与えてくれる。今回はその日活ロマンポルノの白眉『四畳半襖の裏張り』(1973)、『赫い髪の女』(1979)をはじめ、青春映画の秀作『濡れた唇』(1972)、『青春の蹉跌』(1974)、文字通りの抱腹絶倒喜劇『悶絶!!...

[注記:以下に蔵出しするのは、2016年11月、WOWOWでの日活ロマンポルノの特集放送に合わせて、筆者が旧ブログ「In A Lonely Place」にその紹介記事を個人的に書いたもので、この特集放送は既に終了し、近日、再放送の予定があるわけでは格別ないことを、はじめにお断りしておきます。どうかお間違えのないように。既に皆さんも御承知の通り、いまや映画を鑑賞する方法やツールはさまざまにあるので、拙文を読んで、ここに言及された諸々の作品に興味を持たれた方は、各人の自助努力でその先をぜひお楽しみください。]

「オズ、クロサワ、オーシマ、そしてクマシロ―― 『四畳半襖の裏張り』『赫い髪の女』など数々の日活ロマンポルノの傑作、70年代日本映画ベスト作『青春の蹉跌』をのこした伝説の映画監督、神代辰巳の全貌」と帯に謳われ、さらには、「映画とセックスした男の全貌」(!!) という、なんとも絶妙でインパクトのある惹句が目を引く映画本「映画監督 神代辰巳」が先月末に刊行され、早速巷で評判を呼んでいる。

20世紀が到来した新年元日の早暁。今世紀最初の曙光を拝もうと、盛装の貴族達が小高い丘に建つ古代ギリシアの神殿にやってくる。折しも立ち昇る太陽が眼下に広がる海と島々を照らし出し、その美しい眺望に一同が讃嘆して立ち尽くすなか、忽然と彼らの前に、甲冑を身に纏い、白馬に跨った一人の偉丈夫の姿が、シルエットとなって浮かび上がる......。

●追悼 和田誠

2019年10月15日

映画ファンにはお馴染みの才人・和田誠氏が、去る10月7日に死去したとの訃報が、11日になって伝えられた。享年83。

CSの洋画専門チャンネル、ザ・シネマの「シネマ解放区」の11月号に、日本では未ソフト化[後記:この時点ではそうだったが、その後、2018年4月に日本でもDVD化された]知る人ぞ知る恋愛爆笑喜劇、『サンタモニカの週末』(1967 アレクサンダー・マッケンドリック)の紹介記事を書きました。下記のオンライン・サイトに既にアップされているので、どうかお読みください。